ヴァイオリンを持った彼は、
先程までの何十倍も美しい。
なんだ、弾けるじゃん。
私は、その有名な曲に合わせて、
奏でてみた。
彼の音色は、非常に美しかった。
彼も、美しかった。
楽しい。
私は彼と、音楽を共有している。
きっと今、私と彼は
同じことを考えている。
ノクターンを、弾こう。
ピアノの独奏曲を、
彼がヴァイオリンアレンジし、
私は流れるように弾く。
夜想曲。
今までの不思議な時間を思い出す。
大切な人と奏でた音楽は特別だった。
初めて感じる高揚感が、
私の演奏に拍車をかける。
待ち望んだ時間は、一瞬で終わった。
気がついたら、
【夢の世界】に戻っていた。
戻った瞬間は分からなかった。
「あなただったのね。
音楽推薦の、1枠。」
「本当に、ごめん。
その世界に来たってことは、
落ちたことで悩んでいたんだよね。
安心して。君の音色は素晴らしい。」

