「…ちゃん…こーちゃ…こーちゃん?」
はっと気づく。いけない、恭ちゃんのことずっと無視してた。
「あっ、ゴメン恭。めっちゃ考え事してた。」
「なーんだ、考え事?相談事なら、僕に言ってよね。僕、こーちゃんの力になるから!」
ふんっと言って、力こぶを見せる恭ちゃん。筋肉、思ってたよりついてる。いつまでも子供だと思ってる恭ちゃんは、案外高校二年生の男の子だ。
「恭に相談なんかできないよ、相談事もないしね。」
ちょっと馬鹿にした風に笑う。恭ちゃんのこと考えてたなんて言えないよ。恭ちゃんは、何も考えてなさそうでいいな。男女二人で歩いてるってだけで、結構恥ずかしいんだから。
「恭ー、光ー。」
大きく手を振ってる彼の名前は、篠崎春海シノザキハルミ。女の子みたいな名前の男の子。できれば名前を交換したい…。
部屋が隣同士の恭ちゃんと同じく、家の近い春海とも一緒に学校に行く。と言っても、春海が勝手に通学路で待ち伏せしているだけである。