その日の夜、私はなかなか眠ることができなかった。

「あ、山森さん。」

「はい?」

「消しゴム、落としてたよ。」

真野くんと初めて話したのは、高校一年生の夏。

席替えで隣の席になったときだった。

あの頃は優実と同じクラスじゃなくて、特に仲の良い子もおらず、それなりに過ごしていた。

「あ、ごめん、ありがとう。」

「良いよ良いよ。」

男子と話すのはそんなに得意な方ではなかったけど、真野くんは話しやすい雰囲気の人だった。

「うわ、山森さん字が綺麗だね~」

「そうかな?」

「うん、俺なんてこんなだよ。」

「あ、汚いかも…」

「でしょ?」

真野くんは特別格好いい方ではなかった。

でも、面白く楽しい性格から、女子からは結構人気があった。

そして私は隣の席ということで、真野くんとはちょこちょこ話すようになった。