カタカタカタ……と自分の部屋でパソコンを前にキーボードに指を滑らせていると傍らに置いていたスマホが鳴り出した。

「真未?」

画面に表示された真未の名前に朝陽は僅かながら目を丸くしてスマホを手に取った。
説得して付き合い始めてから連絡はいつも朝陽からで、大体は声が聞きたいからと言う理由で電話が多かったのだが、真未からメッセージが来るのは初めてだった。
椅子の背もたれに体重をかけてスマホを操作すると目に入った内容に顔をしかめた。

“昨日朝陽が面倒な奴かもしれないって言ってた常連さんが今朝来た。
朝陽とのことを聞かれたけど、それが気を付けろって言ってたこと?”

「やっぱ聞きに来たか……」

予想はしていたけど、思ったよりも向こうは行動力があるらしい。

“そう。
具体的には何聞かれた?”

“いろいろ。
当たり障りない返事だけしといたから”

「いろいろって、それを聞きたいんだけどな」

苦笑しながら、まぁ、真未に文面の長いメールを期待するのは無駄か。と思い直し、ほんの少しの悪戯心が沸いてもう一度指を滑らせた。

“さすが真未、そんな機転が利く真未が好きだよ”

その文面を送ってからは一切スマホは鳴らなくなった。
恐らく顔を赤くしてスマホを投げ飛ばしたい衝動にかられているのだろうと想像し、一人肩を揺らせて笑った。