「おはよう、岩沢さん」

黒板スタンドに今日のおすすめを書き終わって立ち上がり、朝のバイトはこれで終わりだというその時に後ろから声をかけられた。

「おはようございます」

振り返るとそこにはあの常連の人が笑顔で立っていたのだけれど、その笑顔にどことなく違和感を感じて人知れず眉を潜めた。

「昨日の彼氏、格好よかったね」

「ありがとうございます」

「岩沢さんに話しかけただけで睨まれちゃったけど、独占欲が強いのかな?」

「さあ、どうなんでしょう?」

「彼氏とはどこで知り合ったの?」

なんだこいつ。と真未は内心悪態をつき、顔には見てわかるほどくっきりと眉間に皺を寄せていた。

「同級生だったんです」

「じゃあ、その頃から付き合ってたの?それとも最近?」

「それ以上のプライベートなことはお答えできません」

はっきりとそう言うと常連の人は、ああ、ごめんね。と苦笑いした。
鋭い目付きになっているのを自覚しながらも睨むのを止められない真未は、その苦笑いですら違和感を感じて仕方がなかった。