千夏が注文を聞きに来てくれたおかげで常連の人は朝陽からやっと顔を反らして少し離れた席に座った。
暫く朝陽はその様子を見ていたようだけど、一度周りを確認してからようやく真未に顔を戻した。

「ねえ、あいつ毎日来るって言ってた?」

「え?うん、そうだけど」

「時間帯は?座る位置はいつもあそこ?」

突然質問しだした朝陽に訝しげな視線を向けるも朝陽はじっと見つめたまま答えを待っているようで、真未は小さく息をつくと小声で話だした。

「来店するのは昼が多いらしいけど、たまに朝だったり夕方だったりするみたいよ?
座る場所も大体あの席で、いつも従業員におすすめのパンを聞いてから注文するからほぼ全員と顔見知り」

「……なるほどね」

そう呟いてもう一度だけ朝陽は常連さんに視線を向けた。
向こうも丁度こっちを見ていたらしく、目が合うと然り気無く反らされてしまった。

「何?何かあるの?」

「多分ね。
ちょっと面倒な奴かもしれないから気を付けといてくれる?」

「う、うん?」

朝陽の言葉に頷くと朝陽はふっと、腹減ったな。と笑った。
その表情の変化についていけず真未は戸惑いつつ、千夏が運んでくるサンドイッチを待った。