パン屋のイートインスペースに座っていると、絢や千夏がチラチラとこっちを見てくる視線がすごく気になって仕方なかった。
ただチラチラ見てるだけじゃなくて、何やらニヤニヤと笑っているのだから気になって居心地が悪くなっても仕方ないと思う。

「だから来たくなかったのに……」

「まあまあ、とりあえず何がおすすめ?」

「えっと、クロワッサンアイスが人気なんだけど、それはもう食べてたよね……。
それならサンドイッチはどう?」

「お、いいね。
じゃあ、カツサンドにしようかな」

「じゃあ私はミックスサンドに……」

「あれ、岩沢さん?」

二人でメニューを見ていたら頭上から声が聞こえてきたので朝陽と同時に顔を上げると、そこには例の最近よく来るようになった常連の人がいた。

「こんにちは」

「こんにちは」

挨拶されたので挨拶を返していると目の前に座った朝陽の雰囲気が一気に変わった気がした。
視線を向けてみるといつもの笑顔はなく真顔でじっとその常連の人を見つめていた。

「誰、こいつ」

「最近毎日来てくれる常連さん」

「初めまして、もしかして岩沢さんの彼氏かな?
美男美女でお似合いだね」

「そんなことないですよ」

当たり障りなくそう答えるが、何故か常連の人は興味深そうに朝陽の顔を、対する朝陽は無表情でその人はじっと見つめていた。