無自覚片思いの相手は策士な肉食系でした

「高校の時から付き合ってる彼女がいたじゃない、その人の名前は“ひな”って……。
それってあの人、陽菜さんと同じ名前でしょ？それに仲が良さそうだったから……」

「あのさ、そもそも俺、今まで誰とも付き合ったことないんだけど？」

「………………は？」

朝陽の言葉に思わず声が漏れた。
よくもそんな嘘がつけるなと睨みつけるように目を細めるが、朝陽には効果がないのかたじろぐ気配はなかった。

「嘘言わないで、だって大学で彼女と別れたって言ってたじゃない」

「俺は一言もそんなこと言ってなかったよね、“誰とも付き合ってない”とは言ったけど」

「え？そうだったっけ？」

「そう。
周りが勝手に“彼女”とか“別れた”とか言ってただけ」

「でも、否定してなかったじゃない？」

「その方が都合がよかったからね」

なんの都合だろうかと真未が首を傾げると朝陽は柔らかく微笑んで、ちゃんと分かりやすく説明するから聞いて。と言った。