「考え事なんて真未さんらしくないですよ。
いつも悩みなんて一刀両断する感じなのに」

「千夏ちゃんの中で私はどんな人間だと思われてるのよ」

私だって一人前に悩んだりするわよ。と呟くが、千夏はもう聞いていなかった。
仕方なく、二つずつ袋に入れてまとめ売りされたパンを並べ終えた真未は小さく溜め息をついてフロアを後にしようとするとカラン……と来客を告げるベルの音が聞こえて振り返るとそこには陽菜が立っていた。

「あ、いらっしゃいませ」

「こんにちは」

入ってくるなりキョロキョロと周りを見回した陽菜は突然近くにやって来て、あのっ……。と小声で声をかけてきた。

「私がモデルの陽菜と同じ名前だったり、あと、この前一緒だった人と私が芸能人に似ていたってこと、内緒にしてほしいんですっ!」

それとも、もう誰かに言っちゃいましたか……?と、どこか不安そうにしている陽菜に首を傾げながら真未は頷いた。

「もちろん、誰にも言いませんし言ってませんよ。
お客様の事を誰かにペラペラ話すのは私も好きじゃありませんから」

「よかった……」

そう言って本当に安心したように柔らかく微笑んだ陽菜を見て、真未も微笑み返した。
こんなに必死に頼んでくると言うことは、芸能人に似てるというだけできっと何度か大変な思いをしたのだろうと少し同情した。