「ちょっと、待ってよ!」

腕を掴まれたままどんどん歩いていき、やがて大学を出て近くの公園にまで引っ張られていった。

「離してったら……朝陽っ!」

強めにそう言うと、やっと朝陽は立ち止まって振り返った。
その顔にはさっきまでの冷たさはなくいつもの表情が戻っていて少しホッとした。

「腕、大丈夫?」

「平気。
どっちかと言うと、あの人に掴まれたのより朝陽に引っ張られた方が痛かったけどね」

「そっか、ごめん」

その言葉に苦笑する朝陽をじっと見つめてから真未は徐に口を開いた。

「助けてくれてありがと。
でも、一人で何とか出来たわよ?」

「そうだろうね」

「それにあんなこと言ったらまた誤解されるじゃない」

「あんなこと?」

「ほら、大事とか……そういう言葉は本当に大事な人にだけ使わないと」

そう言うと、朝陽の目はすっと細められた。
今まで見たことのない真剣な表情に真未はのみ込まれそうにり無意識に後ずさると、朝陽がそれよりも大きな一歩で距離を縮めた。

「俺が容易にそういうこと言うと思ってる?」

「え?……っ!?」

元々近かった距離がさらに縮まったかと思うと頭と腰に腕を回され、気づいたときには抱き締められキスされていた。
目を閉じることも忘れて目を見開いてると、少しだけ離れた朝陽がふっと微笑んだ。

「俺、狙った獲物は離さないタイプだから……覚悟しといてよ?」

そう囁いたと思ったら再び口付けられる。
初めての……正確には二回目のその感触に真未は頭が真っ白になり、抵抗することも忘れてその場に固まっていた。