無自覚片思いの相手は策士な肉食系でした

「ねえ、秋村君と付き合ってるって本当なの？」

なんとか講義に間に合い授業を受け終わって教室を移動しようとすると派手な化粧をした高圧的な人に話しかけられた。
この場合付き合っていないと言うと、そうよね、あなたみたいな人が秋村君と付き合えるわけないわよね。と高笑いするのが目に見えていて腹立たしく感じてしまうので無難であろう答えを口にした。

「ご想像にお任せします。
それか、朝陽にでも直接聞いてください」

「なっ……」

そんな答えが帰ってくると思わなかったのか、その人は言葉に詰まってしまったので放って立ち去ろうとすると突然腕を掴まれた。

「何であんたが秋村君のことを名前で呼んでるのよ！
私には絶対呼ばせてくれないのに！」

「そんなこと知りませんけど……。
あの、離してくれません？」

ギリギリと腕を掴む力を強くしていくその人に眉を潜めていると後ろから、何してんの？と以前も聞いたことがある低い声が聞こえてきた。

「真未に何してんの、先輩」

「あ、秋村君……」

「何してんのか聞いてるんだけど、答えてくれる？
それから手、さっさと離して」

あ……！と先輩と言われた人は慌てて手を離したが、解放された腕をすぐに朝陽に掴まれまじまじと見られた。
うっすらと赤くなっただけで何も問題がなさそうなので離してもらおうと顔を上げると、その瞳は冷たく細められていた。