どんな彼女?と聞かれて無意識に、美人な小動物系と答えていた。
高校の時から繰り返し言っていたこの言葉は、今となっては意識せずとも勝手に出てくるようになったようだ。

「朝陽!」

呼ばれて顔を向けるとそこには亮太と真未が立っていて、二人並んで立っている姿に若干イラッとしそうになるがそこは普段から培われた笑顔と言う名のポーカーフェイスで乗り気ってみせた。

「お前、今フリーじゃなかったっけ?」

言いながらチラッと隣へ視線を向けた亮太の意図を汲み取って同じく亮太の隣、真未の方へ視線を向けると、何言ってんだ、こいつ。と言いたげな顔をして亮太を見ていた。


今までは護らないといけない“彼女”がいたけれど、今は他に護ってくれる人がいてバトンタッチもした。
一瞬のうちに考えを巡らせてからもう一度だけ真未に視線を向ける。

何も懸念することはない、元から欲しいものは手に入れないと気がすまないタイプだった。
亮太から仕向けられた暗黙の引き金に乗らない手はなかった。

「そうだよ、誰とも付き合ってない」

勝ち気な笑みを浮かべて言い放ったその言葉に真未は大きく目を見開いて、朝陽の周りにいた人達も驚いたらしく次々に声を上げた。

「じゃあ、私達にもチャンスあるかな?」

「いやー、俺今すごい惚れ込んでる子がいるんだよね。
その子振り向かせるのに必死になるところだから」

「お前、あれだけ溺愛してたのに!?振られたのか!?」

「振られてないし、振ってない」

そもそも、そう見えるように仕向けてはいたけど“彼女”ではなかったし。
とここでは言えない言葉を飲み込んでさりげなく真未を見ると、未だに目を見開いたままその場に固まっていた。