「あ、ごめん、邪魔だった?」

「いや、そんなことないけど……あの人だかりは何?」

「秋村君の彼女の話で盛り上がってるみたいよ?」

「……彼女ねぇ」

何か考えながら呟く亮太に首を傾げるとチラッと見下ろされた。
けれどそれも一瞬で、すぐに人だかりの方へ顔を向けて朝陽!と少し大きな声で朝陽を呼ぶと集団の人達が一斉に此方を見た。

「お前、今フリーじゃなかったっけ?」

何言ってんだ、こいつ。と失礼なのを承知で思ってしまった。
あれだけの怪我を負いながらも護り通すくらい溺愛していた彼女と別れるなんてこと……。

言われた言葉に朝陽は少し考えた様子を見せると、一瞬目があった気がした。
瞬きしている間に視線は亮太の方に戻っていて、その顔には勝ち気な笑みを浮かべていた。

「そうだよ、誰とも付き合ってない」

その言葉に真未は大きく目を見開いて、朝陽の周りにいた人達は驚きそれぞれが思い思いの事を言っていた。
じゃあ、私達にもチャンスあるかな?とか、お前、あれだけ溺愛してたのに!?振られたのか!?とか。
それに対して朝陽は何か言っているようだったが全く耳に入ってこなかった。

あの時の彼を格好いいと思って、そこまで大事にされている彼女がすごく羨ましいと思って、そんな関係に強く心引かれて憧れていたのに……それなのに、別れてしまうことがあるのだと勝手にショックを受けていた。