連絡先を交換したけれどそうそう連絡が来ることもなく、安心したような、少しだけ物足りないような、そんな微妙な感じになっていたある日。
教室に行くと大体いつも座っている場所辺りが男女問わずの人だかりが出来ていて、その中心には朝陽と杏子、そしてみんなが盛り上がっていた。

「えー、じゃあデートじゃなかったのー?」

「違う違う、偶然好きなアーティストが一緒でその話で盛り上がってただけ」

「なんだー、思ったよりいい雰囲気だったからてっきり付き合いだしたのかと思ったのにー」

その会話内容に、先日ハンバーガーショップで盛り上がっていたのを杏子に見られていたのだろうと察した。
朝陽に好意を向けられることはないと言っておいたのに、まだ納得していなかったのかと若干呆れてしまう。

「じゃあ、秋村君は今フリーなの?」

「いや、確か朝陽は彼女いたよな?」

「そうそう、かなり溺愛してるらしくて紹介しろって言っても絶対会わせてくれないんだよなー」

「えー、どんな彼女ー?」

「美人な小動物系」

何それ、わからないんだけどー!と朝陽の答えに周りが笑っていた。
すごくその場所に行きにくい雰囲気にどうしたものかと考えていると横に誰かが立つ気配がして、見上げるとそこには亮太が立っていた。