「やっぱり真未のノートはわかりやすいわー。
教授なんて何を言ってるのかさっぱりだもん」

結局押しに負けて課題のノートを見せることになった。
ちなみに学食ではなく、課題を提出しないといけない講義がある教室の一角でだ。

「そんなこと言ってて試験どうするの」

「んー、その時は真未の家に泊まりこんで教えてもらう」

「……人の迷惑考えなよ」

頬杖をつきながら呆れて言ってみるがマイペースな杏子には伝わらないのか、えへへー。と笑っていた。

「よう、朝陽!いつもより来るの遅いじゃん!」

聞こえてきた名前にドキッと心臓が跳ねつつ平静を装って声が聞こえた教室の出入口の方に目だけ動かして見てみると、男子に囲まれて笑っている朝陽がいた。

彼は高校時代の同級生、三年生の時しか同じクラスにならなかったけど入学当初から知っていた。
容姿端麗、明るくいつでも自然体、話も楽しく盛り上げ上手、男女問わず友達が多く、成績はいつも上位なのに運動も出来る。
そんな彼を好きになる子は多かったけれど、告白する子が少なかったのは理由があった。

彼には高校に入った時にはすでに一途に想っている年上の彼女がいることをみんな知っていて、彼女が美人すぎるが故によく男性に言い寄られるため、彼がよく街中で喧嘩しているのも目撃されていた。

良くも悪くも目立っていた彼の噂は三年間、絶えることはなかった。