「お願い真未!課題写させて!」

「嫌」

「お願い、真未様、仏様ーっ!
今度学食奢るからー!!」

突然後ろから抱きつかれガクガクと揺さぶられながら耳につけていたイヤホンを外して拒否するけど、この友人は毎回聞く耳を持たない。
毎度毎度真面目に課題をやってくる身にもなってほしいと思いつつ、ぺしぺしと後ろから回された手を叩いた。

「学食はいらない、自分でやって」

「そんなこと言わないでー!
プリン!プリンも付けるからっ!!」

「私が甘いもの嫌いなの知ってるでしょ?」

「じゃあ、激辛カレーでどう!?」

「……甘いのが嫌いだからって、辛いのが好きな訳じゃないわよ」

大学の広い廊下をしがみつく友達を引き摺りながら歩くのを擦れ違う人が振り向き様見てくる。
恥ずかしいから止めてほしいんだけど、多分課題を見せてあげるまではおんぶお化けよろしく離れることはないのだろうと深く息をついた。

私、岩沢真未(いわさわ まみ)は大学二年生の自他共に認めるツンツン女子だ。
さっぱりした性格で言いたいことも言って、しかもその言葉がストレートだから初対面の人にはよく怖がられる。
目鼻立ちもハッキリしてるからか普通にしていても冷たい感じがするらしく何か用がない限り話しかけてくる人は少ない。

かと言って友達が少ないわけではなくそれなりにはいる。
その中でもひっきりなしに会いに来るのがこのおんぶお化けの小峯杏子(こみね きょうこ)だった。