「これで荷物全部?」

「えーと……うん、全部片付いたみたい。
朝陽は?」

「俺も終わった」

だからおいで。とでも言いたげに、敷いたばかりのラグの上に座っていた朝陽は両手を広げて小さく首を傾げた。
……自分から行かないといけないのかしら……。と仄かに顔を赤くするけれど、朝陽は笑顔でずっと待っていた。

ゆっくりと、朝陽に近づいて目の前でラグの上に座る。
やっぱり自分から広げられた腕の中に収まるなんて出来そうにないと視線を反らしていたらそっと腕を捕まれた。

「多分何もしないからさ、おいでよ」

「多分って言うのが怪しい……」

「抱き締めてキスして目一杯可愛がるだけだよ」

言いながら優しく腕を引かれると、抵抗する気のなかった真未は簡単に朝陽の腕の中に収まった。

「それは、何もしないって言わないと思うけど」

「いいじゃん、今日くらいは。
二年も待ったんだからさ」

言いながら頭を撫でたり髪を弄んだり、朝陽は真未が腕の中にいることを楽しんでいるようだった。

朝陽から記入済みの婚姻届を受け取ってから約二年。
先週無事に大学を卒業した二人は結婚に向けて動きだし、今日は新居となるマンションに引っ越してきたのだった。