「真未……?」

ほんの少し狼狽えた様子の朝陽に真未はふっと笑うと身を寄せて朝陽の耳元に顔を寄せた。

「好きじゃない、好きだけじゃ足りない。
私は朝陽を愛してるのだもの」

そう囁いて初めて自分から、頬にだけど触れるだけのキスをすると真未は、朝陽は“好き”だけで足りるのかしら?と挑発するような言葉を残してその場を立ち去った。
後に残った朝陽は呆然と、けれど見る見る内に真っ赤になってその場に蹲り腕で顔を隠した。

「あ、朝陽……?どうした?」

「真未ちゃん?」

真未の言葉が聞こえなかった亮太と大輔は朝陽の様子に戸惑い朝陽と真未を交互に見ていたが、真未はあえて気づかないふりをした。

「ほんと、真未には敵いそうにないな……」

凄く小さく、自分の前髪をくしゃりと握りながら未だに赤くなったままの顔で呟いた朝陽を見て、真未は満足げに微笑んだ。

やられっぱなしなのは性に合わない。
たまには仕返ししないと朝陽に振り回されっぱなしになってしまうではないか。と真未はくすっと笑って千夏と杏子のもとへ向かった。

婚約して最早開き直ったと言っても過言ではない真未は、朝陽に振り回された分だけ自分も振り回してやろうと決意したのだけれど、それが結婚するまで、果ては結婚後も続くことになるとは思わなかったのだった。