「婚約おめでとうございます、真未さん!」

「ありがとう、千夏ちゃん」

「おめでとう、真未!でも、さすが秋村君よね。
こんなに早く婚約するなんて思わなかった」

やっぱり肉食系でグイグイおされたら転がっちゃうものなのかしら?と首を傾げる杏子に苦笑して真未は特別に貸し切りにされたバイト先のパン屋のイートインスペースを見回した。

千夏や杏子、大輔や亮太などお互いの仲のいい人だけを集めたプチ婚約パーティーを開いてもらって真未は嬉しいと同時にもう後には引けないなと改めて覚悟を決めた。

ライブ中にプロポーズされてOKはしたもののそれから話しは全く進んでいなくて、恐らく真未の気持ちがしっかり固まるのを待ってくれているのだろうと思っていた。

「よかったな、朝陽。
長年の片想いが報われて」

「まあ、何があっても絶対逃がす気も手放す気もなかったからね」

「ずっと準備してたんだろ?
早い内から仕事始めて貯金して、一人余裕で養えるくらいの実力もつけて……そこまでやって万が一岩沢さんが振り向いてくれなかったらどうしてたんだ?」

「さあ、どうしてたんだろうな?」

不適に微笑んだ朝陽のその笑みはどことなく黒いオーラが見えた気がして、聞いた亮太も近くにいた大輔も、そしてたまたまその会話を聞いて何となくそちらを見ていた真未も一瞬固まった。