「すげー!俺全然とれなかったのに!」

「本当だ!Kaiserって書いてる!」

「チケットとれた人初めて見た!」

「岩沢さんすごいラッキーじゃん!握手しといて!」

朝陽だけでなく周りにいた友人達も幻とまで言われているKaiserのコンサートチケットに興奮していて、どさくさ紛れに真未と握手しようとしている奴もいた。
相手が女子だったから黙っていたけど、男だったら引きずり戻していたなとみんなと握手やハイタッチしている真未を見て苦笑した。

「朝陽、絶対この日のライブ行くよ!
他に予定入れないでよね」

「もちろん!真未こそ忘れるなよ?」

忘れるわけないじゃない。と満面の笑顔で答える真未に友人の何人かが見惚れているのを見て優越感に浸る。
今さら近寄りがたいクールビューティーなだけではない真未の魅力に気づいたって遅い。
真未はもう自分だけのもので絶対手放せないのだから。

「楽しみだね、初めてのライブ」

本当に楽しみにしていると言った様子でスマホを口元に当てて幸せそうに微笑む真未をずっと間近で見ていたくて、朝陽は目を細めると兼ねてから準備していたことを実行しようと決意したのだった。