「ちょっと二人とも、一体何してたのよ?」

キャンプ場に戻ったときにはすでに杏子達は戻ってきていて、ずぶ濡れになった状態を見られて驚かれてしまった。

「真未が兎に驚いて足滑らせて、転けた瞬間にとばっちり」

「違っ……いや、違くないけど、でも違うから!」

兎に驚いたのはそもそも朝陽がキスしようとしてきたからだと言いたかったけれどそんなことを言えるはずもなく、真未はもどかしく感じながら朝陽を睨み付けた。

「もう、いいから早く着替えてきなさいよ。
真未と秋村君のテントはそっちね」

「了解。
行こう、真未」

「……ちょっと待って」

杏子の言葉に疑問を持つことなくテントに向かおうとする朝陽を止めて、真未はキョトンとした様子の三人を見回した。

「私と朝陽のテント?
杏子と柏木君は?」

「あれ、言ってなかったっけ?
恋人同士テントは別々にして泊まるんだけど?」

聞いてないわよそんなことっ!わざと言わなかったでしょ!?と怒ってみせるも杏子はしらばっくれて大輔は苦笑している。
突然朝陽と一晩二人きりなんて絶対無理だと思っていると、いきなりグイッと手を引かれた。

「平気平気、一晩一緒でも少しくらい我慢できるから」

「少しって何!全く信用できないんですけど!?」

「大丈夫だって、婚前交渉は真未の許可なくしないって言ったじゃん」

「っ……また人前でそう言うことを……っ!」

ギャーギャー言いながらテントに向かって歩いていく二人の姿を杏子と大輔は苦笑しながら見送って、何だかんだでお似合いの二人だよね。と言っていたようだけれど真未の耳に届くことはなかった。