「……何で朝陽がここにいるの?」

陽菜さんの傍にいてあげてって言ったわよね?と注文された惣菜系トーストを数種類持ってきてテーブルに置くと、その目の前に本を片手に座っている朝陽をジトッと睨み付けた。

「いや、実は姉って仕事の関係で常に周りに誰かいるんだよね。
一人になるときって兄さんも仕事の時に勝手に外に出てるときくらいでさ」

「勝手にって……」

ま、とにかく今は大丈夫だから気にしないでいいよ。と微笑まれるとそれ以上強く言えず、仕事に戻ろうかと片足を踏み出したときにスッと誰かが横に立った気配がした。

「こんにちは、やっぱり二人は仲が良さそうだね」

「付き合ってんだから当たり前ですよね」

例の常連さんが和やかに朝陽に話しかけるが、朝陽は顔を向けることなく本に視線を戻して素っ気なく答える。
なんとなく戻りにくくなった真未はその場に留まると二人の様子を観察していた。

「難しそうな本だね、何の本を読んでるのかな?」

「社会心理学。
なかなか参考になりますよ?どう言えば予想した通りに人は動くのかとか、どういった心理で行動してるのかとかね」

「すごいね、カウンセラーでも目指してるのかい?」

「いえ、野望を叶えるために必要なんで。
ああ、でも一応カウンセリング出来るんでやってあげましょうか?」

盗撮を繰り返す人用のカウンセリングとか。と挑発的に笑って言い放つ朝陽に常連の人は笑みを絶やすことなく見つめていた。
これ以上放っといたらお店の迷惑になりそうだったので真未は仕方なく間に入り込み常連を空いてる席に誘導した。