「こんにちは」

「……こんにちは」

少し後退り、警戒心をあらわに睨み付けるが目の前の人は少しも動じていないのか笑顔を崩さなかった。

「こんなところで会うなんて偶然だね」

「そうですね」

「さっきの人はお友達かな?」

「話す必要はないと思いますけど」

素っ気ない答えにその人は、ほんの一瞬笑顔をなくして鋭い眼差しを向けてきたのを真未は見逃さなかった。
それと同時に普段この人の表情に感じていた違和感の正体に気付いてあからさまに眉を潜めた。

この人、いつも作り笑顔だったんだわ……。

すぐにいつもの笑顔に戻ったその人が持っているカバンに目を向けると、隙間から何かが光ったのに気付いた。

「もしかして今の人が彼のお姉さんかな?
あんまり似てない気がするけど、そうだよね?」

「さあ、私にはわかりかねますね。
ただ一つわかることは……」

犯罪に手を染めるのはお勧めできませんということだけです。

足を踏み出しすれ違い様にそう言うと、目を見開いてこっちを見下ろしているその人を一瞥してその場を立ち去る。
どうやら面倒なことに巻き込まれそうだと心の中で覚悟をして、真未は真っ直ぐ前を向いた。