それを見たのは偶然だった。

部活帰りの夕暮れ時、大通りから少し離れた人通りの少ない道の路地裏に入った場所。
ドサッという重たいものが地面に落ちる音と微かな呻き声が聞こえ何の気なしに見てみるとそこには数人の男の人が倒れていて、その中央には争ったのが一目でわかるように服が乱れ殴られたのか痛そうに頬を腫らして血が滲む口を袖で拭っている男が立っていた。

「なに?もう終わり?」

思い切り殴ったのか地面に倒れたまま動かない男の胸ぐらを掴み上げ顔を近づけている。

「ねえ、こんな簡単にのびられちゃ困るんだけど?」

軽く揺すっているが男の反応がないようで、完全に気絶してるらしい男に興味を失ったのか、掴んでいた手を離すと男は重力に逆らうことなく再び地面に背中をつけた。

「陽菜に近付きたいなら最低限、俺を倒せるようになってもらわないと。
正々堂々、一人でね」

って、聞こえてないか。
と冷めた瞳で男を見下ろしながら笑うその表情にゾクッと背筋が凍ると同時に目が離せなくなった。

秋村朝陽(あきむら あさひ)。
良くも悪くも有名人なクラスメイトがそこにいた。