――その時。


僕は、小川の岸に先輩に投げ捨てられたお守りが流れ着いてるのに気づいた。


もう完全にぐしょ濡れでお守りとしての効力はない。だからこそ僕は今にも消えようとしている。


それでも。


彼女との僕を繋ぐ唯一の証に縋りつくように、僕はフラフラとそれに歩み寄って……


瞬間、ボロボロのお守りから映写機の様に穂香の姿が浮かび上がった。


「え……?」



唖然とする僕の前で、先ほどの浴衣姿の穂香が微笑む。


「泣かないで」



泣かないで、か。


絶望の中で死にゆく者への手向けがそれなのか。君なら分かってくれると思ったのに……!


彼女の残留思念は、そんな僕の心を読み取って……胸元に手を当てた。



「私は、ここにいるから」