「後15分もしたら、アイツが来るから帰る用意して。」

アイツとは笹山の事だ。

笹山自身には関係なかったけれど、笹山の『ささ』という愛称で

彼女はパニックを起こした。

どうやら、彼女には双子の妹がいるらしく

妹と同じ愛称で呼ばれたせいで、過去を思い出したみたいだ。

詳しい話は聞いてないが

生まれつき心臓の悪い妹さんに

罪悪感があり、ワガママを言うことなく

一人淋しい時間を、過ごしていた。

自分の孤独にも気づかないで育った彼女。

俺との時間が…………

寂しさを知るきっかけとなったという。

だったら、俺に出来ることは

安心な居場所を与えることだ。

別に………

年の離れた子供を、恋愛という関係に持ち込む気はない。

ただ、目の前で苦しむ子供を

見ないこととして、通り過ごすことができないだけだ。

酔狂なことをと…………思うけど。

野良犬を拾う時というのは…………

こんなものだろう。