「ふふっ。」

咲が楽しそうに笑って

「気持ちの良い話しじゃないけど……聞いてくれる?」と

明るく話し始めた。

ただし、表情は強ばっていたけど………。

「前に言ったと思うけど………
私は、双子のお姉ちゃんだったの。
家は、銀行員のお父さんと専業主婦のお母さんと四人暮らし。
お金持ちではないけれど、不自由しないくらいには裕福だった。
隣の家には………5歳上の颯兄がいて、幸せだった。
狂い始めたのは…………
私が3歳の七五三を迎える少し前。
幼稚園で運動会の練習をしていて……咲々が苦しんで救急車で運ばれた。
心臓の弁が傷んでて………。
生まれつき弱かったけど……心臓病と診断されたのはその時だった。
それからは、退院することなく
ドナーを待ちながら、病院のベットの上で過ごしたの。
結局、七五三のお祝いも運動会の応援もおあずけで………。
小さい私は、大変さも病気の辛さも分からないから
ただ自分の幸せが無くなったことに嘆いてた。
でも本当は、そんなのは序の口で…………
家に帰れない咲々の為にお弁当を作って
親子3人で病院でご飯を食べるようになったの。
私は…………
家政婦さんが作っておいてくれた冷めたご飯を
レンジでチンして食べてたのに。
もしも、同じチンでも………
お母さんが作ってくれてたら………もう少し変わってたのかもしれないけどね。」