俺は、喫茶店のマスター。

趣味が高じて、今では店を持っている。

閑古鳥がなく程客はいないが

決まったお客には、憩いの場になっているようだ。

儲けの為に始めた訳ではないから…………

まぁ……狙い通りの店になったかな。



駅に程近い、一本路地を入ったところにある。

サラリーマンや商店街の親父が多いこの店に

二十歳の彼女が訪れたのは、偶然の賜物。

同じ職場の先輩に失恋して………泣き顔で入ってきた。

もしもあの時、雨が降りださなかったら

彼女は今……………ここにはいない。

泣きじゃくる彼女が可愛いくて

お客さんのプライベートに、初めて踏み込んだ。

「送って行くよ。」

たぶん、一度の偶然で終わりたくなかったんだろう。

それから間もなくして………

俺のプライベート空間に上げるようになり

今では合鍵も渡している。




ただし、付き合っていない。

彼氏彼女の関係ではないのだ。

妹……………とも違う不思議な関係。

強いて言えば……………野良犬………かな??

のら猫ではなく……………野良犬。

拾われて温めてもらえることを、じっと待っていたようだ。

全身から

『私を見つけて!』と訴えてる彼女が痛々しくて

拾い上げるのに時間はかからなかった。