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スマホが何度も繰り返し震えた。
人の多かった駅のホームも次第に少なくなっていき、気がつけば電光掲示板には一本の発車時間のみしか映し出されていなかった。
「帰らないとな…」
わかっているのに、どうしても体が抵抗する。
有璃紗は一体どんな反応をするだろう。
もうすぐ生まれる子は、俺のことを知らずに生きていくのだろうか。
そんな小さい子を、有璃紗一人で育てていけるのだろうか。
言い知れぬ不安に蝕まれた。
それでも辛うじて指先だけを動かし、スマホの画面を確認する。
『今日遅いね、飲み会？』
『大丈夫？』
『どこにいるの？心配だから連絡してほしい〜』
文章の最後に、少し泣いている顔文字をつけている彼女が愛おしい。
そこでようやく、既に心配をかけていたことに気がついた。
「ダメだなぁ」
俺はどうしようもないやつだ。
何とか体を起こし、最後に入ってきた電車に身を乗せる。
『ごめん、今から帰る』
『それと、後で話したいことがあるんだ』
送るかどうか迷った。でも結局話すことに変わりわないし、逃れることもできない。
気が変わる前に送っておこうと、送信ボタンに静かに触れた。
