届け、響け、広がれ。

「ピアノを弾く時って、どんな気持ちなの?」
彼女は、んー、と唸ってから言った、
「私は、ぐわってなる感じ?」
「ぐわっ?」再度友人が聞き直す。
「うん。ぐわっ、」
「えー、意味わかんないよー、」
彼女の友人達は笑った。
「それしかいいようがないんだもん」
彼女もそう言って笑った。

ピアノの歴史を音楽で習ったことがある。ピアノの原型を作ったのはイタリアの楽器作製家、フランチェスコだと言われているそうだ。
私はそれを聞いたとき、彼は天才だと本気で思った。弦楽器でありながら、弓で弾くんでも手で掻きでかきならすのでもない。弾く(はじく)のだ。そして、泡のような、か細い糸のような、でも図太い木のような、そんな音を奏でる。
更に、数々の音楽界の歴史を、その音で変え、ベートーベン、モーツァルト、シューベルトなどの音楽家が数々の新しい旋律を作った。また、その旋律は今も尚、弾き継がれ、全世界の人々を感動の渦に巻き込んでいる。たった1つの楽器かもしれない。

けれど、それで今まで何人の人が救われただろう。何人の人の心が動かされたのだろう。それを思うと、フランチェスコという楽器作製家に感動した。

私は、立場は違うけれどで彼のような人々を感動させられる、そんな弾き手になりたいと思った。
…まぁ、弾き手といえどまだ誰にも感動を届けられていない弾き手なのだが…。