世界最後の朝を君と

「『好き』じゃ無いんですか?」

私がそう言うと、女子生徒は髪を耳にかけながら、目線を反らす。

「…『好き』でした。本当に。でも、今は嫌いです」

女子生徒は気だるそうにそう答えると、体をパソコンに向けて、頬杖をつく。

「…どうして、嫌いになっちゃったんだろう。あんなに好きだったのに。餅ネコも、私自身も」

女子生徒の声は今にも消えそうな程小さい。

「…センパイ、OP終わりますよ」
「…あ」

私はふと我に帰り、TVに目を向ける。

部屋はとても静かで、餅ネコの話す声と、窓の外の烏の鳴き声だけが耳に入る。

いつもと何も変わらない筈の餅ネコが、今日は全く頭に入らない。

台詞が全て右の耳から入り、左の耳から出て行く。

「……」

突然、女子生徒が立ち上がる。

「えっ、ちょっと」

私は女子生徒に手を伸ばすが、彼女はお構い無しにスタスタと部屋を出て行ってしまう。

ドアがバタンと閉まる。

ぎゅっと胸が痛む。

怒らせてしまったのだろうか。

餅ネコの話をし始めた時、「友達になれるかも」なんて馬鹿な事考えていた自分を恨む。

餅ネコの事が嫌いなのは分かったが、ただ単に嫌いになった訳じゃ無い事くらいは、察しの悪い私でも分かる。

私はとても餅ネコを観続ける気分にはなれず、TVを消してしまった。