あの夏の君をさがす

先生の手伝いも終わって1日で一週間ぐらいの仕事をした感覚だ。
いつも一緒に舞奈ちゃんと帰っているため、なんの約束もなしにSHRが終わってから一緒に歩いている。
「もう今日は本当に疲れたよ。先生のひとづかいっぷりは本当に荒い。疲れたぁー。何か私に癒しをください。帰りにもう一回だけクガくんの姿見れないかなー。そしたら疲れも癒されますわ。」
「あんたは、何を言っているんだ。そんな都合よく現れてくれるわけなかろうに。」


……


「舞奈ちゃん?噂をすれば何とやらだよ。」
私たちが駐輪場の横を歩いているとそこには友達と楽しそうにしているクガくんの姿があった。

本日2回目。
もうなんて幸せなんだ。拝みたい気分だ。

そんなことを考えているとふと彼と視線がぶつかった。
私は恥ずかしくなり視線を逸らしたが、今度は気のせいではなかったようだ。


なんだか最近よく目があうような…。そ
れも私の幸せな気のせいかもしれない。それが幸せかとうかはなんとも言えないが遠くから見るくらいがちょうどいいんだと思う。だって会って話してもきっと相手にしてくれないだろうから。
寂しいような。
そんなことないようなだ。




「ねぇ、舞奈ちゃん授業中に話してたことなんだけどあれってどういうこと?」
「あー、あれね、なんだっけ。今確認するわ。ちょっと待って」
「もー、覚えといてよね。そのあとの授業中も手伝い中も気になって仕方なかったんだから。」
「ごめんごめん。今確認した。」
「それで、その人のこと知ってるんでしょ?だれなの?」
「本当にいってもいいの?聞いて後悔しない?」
「うん。後悔しない。大丈夫。」
「本当だね?」
「舞奈ちゃん勿体ぶらないでよ。」

本日この流れ2回目である。
舞奈ちゃんの意地悪。


「わかった、教える。心して聞いたほうがいい。」
「はい。」
「私が学校(同じ学年)で知ってる人で『かずき』って名前の人クガくんしかいないから、恐らくその『かずき』って人は私の予想が外れてなければ彼のことだよ?」

「・・・・・・・・?・・・・?」


え?今なんて?舞奈ちゃんはなんて言った。クガくんの下の名前が『かずき』で私がネットで仲良くしてる同じ学校の二つ隣のクラスらしい人も『かずき』それが同一人物ってこと?
どいういこと?意味がわかんないんだけど。



「おーい、ひな?大丈夫か?」
私が考えに耽っていると、舞奈ちゃんが目の前で手をヒラヒラ振っていた。
「え?あー、うん。一応大丈夫。多分、多分大丈夫。」
「感情がないぞー。本当に大丈夫か?そんなんじゃ、帰り私と別れた後不安なんだけど本当に大丈夫?駅まで一緒に行こうか?」
「ううん。大丈夫だよ。ありがとう。」
 今すぐにでも水を頭から被って冷静になりたい。
思考がぐるぐるしててどうしたらいいんだ。それに、よりによって自分が気になっていたい人と知らないところで関わっていたなんて。これからどうしよう。

それに…
それよりももっと肝心なことが何も解決していない。
「ねえ、舞奈ちゃん私のついた嘘はどうしたらいいの?」
「そうだね、どうしようね。ひなはどうしたい?『かずき』がクガくんだって知っても尚、隠し通したい?それともちゃんと本人と会って話したい?」
「私は本人と話したい。せっかく電話もして普通に話せるような仲になったのに、このままなのは嫌だ。」
「そうだよね、何かないかな?もう一層の事本人に声かけに行っちゃえば?」
「冗談でしょ?私が人見知りで、人の顔もろくに見れない事知っててそれ言う?」
「大丈夫じゃないの?だって電話では普通に話せてたんでしょ?」
「それとこれは別だよ。だって電話は顔見えないけど面と向かって話すとなると、とてもじゃないけど怖くてまともに会話できるかも不安だよ。」
「そうくるか、そうだよね。ひななら有り得る話だね。それじゃさ、電話で本当の事を話すか、あとは農林科の人で知り合いいないの?友達作ってその人と仲良くなってからとか?すごい遠回りだけど。即決は難しいだろうからゆっくり考えな」
「うん…。」



「ありがとう。舞奈ちゃんこの後出かけない?」
「いいよ。このまま帰すのも不安だしゆっくりして帰ろう。」









今知ったことで思い悩んでもきっと正しい答えはでない。
それに正しい答えってなんだろう。
私のほしい答えってなに…。