携帯から着信音が鳴る。

「もしもし」
『はい』
「はじめまして、緋奈乃です。」
『おう。俺は和樹。よろしく』

彼の名前はじめて知った。私の耳に入ってくる声はすごくいい声でピンポイントに響いてくる。
すごく心地のいい声だ。
でも、どこかで聞いたことのある声でもあるようなそんな気がする…。
どこできいたことあるんだろうか…。


そんなことを思いながら、それでもお互いに好きなものを共有するかのようにごく自然に、初めて話す人じゃないみたいにすらすら言葉が出でくる。


「私ね高校生になってヴィジュアル系真剣に聴き始めたの。私Blue Emotionすごく好きなんだ。初めて聴いた時に私の心を見透かしているようなそんな歌詞で優しく包んでくれるような歌でさ、Moroが弾いてるベースの音がすごく好きなんだよね!知ってる?」
『うん。もちろん知ってるよ。いいよなあのバンド!優しい歌詞だけど少し激しめな音楽で俺は喝を入れられるような感覚になる』
「本当にいいよね。もっとみんなに知ってほしいよね。もっと世間に浸透しろぉー」
『あはは。音楽もだけど、みんなそれぞれ好きなものは違うし、無理言ってもその人の心には届かないよ多分だけど。それでももっとみんなに届けばいいのにな』
「正論すぎて返す言葉がないよ。あはは…。」







気がつけば日付が変わっていた。

「明日も学校だから、もう寝ないとだね、ごめんね。今日は楽しかった。ありがとう。よかったらまた話そうね!」
『そうだね。またね。おやすみ』
そうして私と彼とのはじめての電話は終わった。









また明日も学校か。
いやだな。
あまり楽しくないし、終わった後もバイトだ。


寝て目が覚めたら学校に行かないといけないんだから。
それが本業であることは確かだが、何か一つでも楽しみがあればいいのに。