山を下る途中に足を止めた、沙羅は木々の中に隠れに行った。



腹部からの出血が止まらないのだ。



「参ったな~・・・」



木に凭れながら、腹部の傷を抑える。



目を瞑った。



見えるのは、何年前かの映像。



―幼い少女は子供が出来ない夫婦に迎えられた。

少女が引き取られた翌年にその夫婦に娘が出来た。

いつの間にか、その夫婦は、愛娘しか可愛がらなくなった。

少女は耐えた。家に帰っても・・・1人で過ごしている事に。

夫婦は出かける時に限って少女を置いていった。

自分の娘だけをつれて出かけていた。

少女はずっと1人で過ごしていた。

涙を流したことも無かった。

夫婦は、少女を学校に通わせて食事、寝床、風呂だけ与えた。

自分の娘には服とか少女には秘密で色々買っていたのを知っていた。

少女は小学5年生の時には・・・夜に外で暴れだしていた物の存在を知っていた。

その時にあの6つ上の2人の少年と出会った。

それから、1年経ち・・・霊力とともに霊感が強くなり・・・パートナーとなって

仕事に行っていた。

涙を流せなかった少女。

今も・・・本当に流したことは無い。―



沙羅は目を開けると、目の前に青年が立っていた。



「紅燐・・・?お久しぶりね」



青年の顔は整っていて、黒髪に真紅の瞳が特徴的だ。



「沙羅・・・お前は・・・変わらねぇな」


青年―紅燐は、沙羅を持ち上げて山を降りた。