「・・・ヤマタノオロチ?」



八つの首に増えた。



そして、紅い・・・真紅の様な目が沙羅を捕らえる。




「嘘でしょ・・・出雲の国で滅ぼされたハズじゃないの?」



樹里の力のない声が沙羅の耳に入った。



「滅ぼされた、って思う?コイツはね・・・生きててこの地に入ったが封印されてたんだよ。長い間。でも・・・生贄を喰らう様になってからは封印が弱まりだしたんだ」



沙羅が樹里にそう言って、秋冷を見た。



「悠里をよろしくね?秋冷」


両手を打ち合わせた。


乾いた柏手の音は風に掻き消される事無く清澄に響き渡る。



合わせた掌を引き離すと、掌の間を黒い光の線がつないだ。



鈴羅はソレを右手で引き抜くように横薙ぎに振るう。



「【黒月―コクヅキ―】召喚!」



鞘と刀が現れる。



漆黒の鞘と柄。



沙羅は柄を握り、鞘から抜いた。


刀身が現れる。



その刀身は白く・・・輝いていた。




刀を右手で、鞘を左手で持つ。



そして、沙羅は・・・走り出した。