携帯をいじっていた天津くんが「ちが」と立ち上がるのと同時に、それを上回るボリュームで私は叫んだ。


「ちがう!」


すると私の声は鶴の一声となり、シン…と気持ちが悪いくらいに静まり返ってしまう。


「あ…あの、そういうんじゃ、ないです。
私と天津くんは…いじめてるとかいじめられてるとか、付き合ってるとか、そんなんじゃなくて、友───」


"友達"


そう言おうとして、言葉が喉で引っかかった。


そういえばまだ、友達という関係を約束されたわけじゃない。


ただ名前呼びを許してくれただけ。


友達で…いいんだよね…?


「俺とそいつはただのダチだから」


私の迷いをかき消すように、天津くんが低い声でそう言った。