「すみません、帰ります」


しばらく泣いたあと、途端に恥ずかしくなった私は慌てて席を立った。


「ハンカチは洗って明日返しに来ます」

「…姫川さん、」

「…はい」



なぜか少し暗いトーンで呼ばれた自分の名前に、なんとなく胸騒ぎがして。


つぎに先輩が発したのは、突拍子もない言葉だった。



「前世の記憶があるの?」

「…は?」



どんなジョークだよ、と突っ込みたくなる発言。

でも先輩は至って真面目らしく、じっとこちらを見ている。


前世の記憶…って、そんなのあるわけないのに。



「ないです」

「…そっか」

「どうして?」

「御門天津くんが姫川さんのクラスにいるだろ?」



ああ、あのツンデレくんか。



「御門くんは前世の記憶があると思うよ」

「…はあ、」

「しかも彼の前世は、姫川さんに大きく関係あると思う」

「どういうことですか?」

「…君の前世が織姫なら、の話だけど」



…え?