自分でも、なんでこんな物語を作っているのかわからない。
それでも真剣に聞いてくれている彦星先輩の顔を見て、続けた。
「織姫が危篤になった頃に、やっと彦星は天帝から織姫の状態を聞いて、天の川に走った。
その日は7月7日で、でも雨が降っていて天の川を渡れない。
そこで危篤の織姫の所にかささぎの群れが来て、織姫を天の川まで運んだあと架け橋になり、彦星はその橋を渡って織姫の最期を看取った。
──って、ただの妄想ですけど」
私の作り話を聞いたあと、彦星先輩は少し顔を辛そうに歪めて、私を見つめた。
その視線に耐えられなくて、思わず俯く。
「…使って」
「え?」
隣に来た先輩が差し出したのは、ハンカチだった。
なんでハンカチ?
そう思うと同時、ふと頬に冷たいものが伝っていることに気付く。
「な、なんで私…」
やだ。自分の作り話で泣くなんて。
でもなんで?止まらない。
悲しくて悲しくて、辛くて寂しくて、
次から次へとあふれる涙を抑える術が、わからなかった。

