桜の木の下で

「俺は行かない。違うヤツ誘って」
「菅田さんじゃなきゃ駄目なんです」

無理矢理、腕を組まれて連れて来られた。
抵抗するのも面倒臭い。
食事だけして帰ればいいかぁ。

料理は美味しかった。
アイツだったら喜んで食うよなぁ……。
前に飲みに行った時も
美味しそうに料理、食ってたよなぁ。

「ふふっ」
「菅田さん、楽しそうでよかった」
「あぁ。ちょっと思い出してなっ」
「……思い出し笑い」

俺は、あえて言葉を付け加えたのだ。
山下さんといるから楽しいわけではないのだから。
俺は、今、アイツが頭から離れないのだから。

その言葉を言ったせいで
笑顔から不貞腐れた表情に変わった。