桜の木の下で

「なっ、何ですか?」
「あっ、ごめん」

坂下さんは私の腕から手を離した。

私があまりにも驚いた声を出したから
驚いたみたいだ。

「あのさ~、これから時間ある?」
「えっ?」
「もしよかったら飲みにでもいかない?」

坂下さんは照れたように、
少し下を向きながら私に話しかけた。

なんで私?
坂下さんならモテそうなのに。
もっと可愛い人を誘えばいいのに。
私なんかと飲んだって楽しくないと思うけど?

???
疑問だらけだ。

「忙しいならいいんだ。
あっ、もしかしてこれからデートとか?」
「えっ?」

あっ、私が無言だったから。
考えすぎてボーッしてしまった。
どうしよう。
今日は、もう帰りたいのに。
それより坂下さんは、なぜ私を誘ったの?

私を好き?

ないないない。

女性なら誰でもいい?

そんな嫌な人ではない。

同僚として?

あっ、それならあるかも。
でも今まで話したりしてなかったし。
これもないか。

じゃぁ、なんで?
本当になんで?

「なんか困惑した顔してるね」
「何でかな?と思って」
「? 何が?」
「何で私なんですか?
坂下さんなら女性が放っておかないでしょ?」
「ははっ。俺そんなにモテないよ」

坂下さんは苦笑いした。