花火大会からしばらくは
アイツとも会う機会がなかった。

俺も仕事が忙しく、
余裕がなかった。

アイツのことなんか忘れてた。

やっと仕事も落ち着いて、
残業もなく帰れた時、

さくらを思って見つめた桜の木の下に
見覚えのある女がいた。

あっ、アイツ。
雰囲気が変わった。
大人っぽいというか…………。
背伸びしてるというか…………。

アイツらしくない。

そんなこと思ってたら
声をかけてた。

相変わらず可愛げのない言い方をする。

それは変わらないんだな。
それがちょっと嬉しかった。

なのにアイツは…………。
泣いてた…………。

「人の気も知らないで」

アイツの言葉が離れなかった。

「さよなら」

泣くほど、俺が嫌いだったのか?
そこまで嫌われてたとはな。

俺はその場から動けなかった。