桜の木の下で

「佐藤先輩だけには、話しますね」
「なに?」
「私、2年前から気になる人がいるんです」
「うん」
「オフィスの前に桜の木があるじゃないですか?」
「あの大きな桜の木ね……」
「あの桜の木を悲しそうな顔で見つめていた男性かいたんです。会ったのは1年に1度だけ。でもその人のことが気になって仕方ないんないです」
「そうだったの。会うのは1年に1度だけなんて……。寂しいわね」
「でも、何も知らない人ですし、仕方ないです。でも今は仕事を覚えて、頑張らないと。だからその人のことを考えるくらいが丁度いいんです」

私は残りのビールを飲み干した。