「乾杯〜」

みんなでグラスを合わせる。

「なんかあった?」

私の顔を見て、佐藤先輩が質問する。

「えっ?」
「なんもねぇよ」

稜はつまみを食べながら
素っ気なく答える。

「稜に聞いてない。
葉月ちゃんに聞いてるの」
「なっ、何もないですよ」
「そうかなぁ?」
「そうですよ」

私もつまみを食べて、
心を落ち着かせる。

心臓はドキドキだ。
なのに、稜ったら
何事も無かったように
普通な顔をしてる。

「今日は何かあるのか?紀輝……」
「あぁ……」

なんか、言いづらそうだ

「俺たち、結婚することにした」
「…そっかぁって、やっとだな。おめでとう」
「おめでとうございます」
「ありがとう、葉月ちゃん」
「じゃぁ、もう一度、乾杯しようぜ」

みんなで

「乾杯〜」


佐藤先輩。
嬉しそうだなぁ。
彼氏さんも……。
稜は……?
笑ってる。
もう、大丈夫かな?

そんな私に、気が付いたのか
私の手を握ってくれた。

ドキッとして、稜を見ると
私を見て、バ〜カって、
口パクをしているのが
わかった。