辺りを見回しても姿は皆無。一体どこへ…。

「こっちよ」

冷たい回答。背筋がぞっとする感覚を覚え振り向くとそこには、満身創痍な少女が見せた口角が一瞬上がったような形跡。勝利を確信した笑みなのだろうか。
俺の背を狙い一発撃ち込まれた。放たれた弾丸、それを避けるためについて懐に隠していたもう一丁の小型銃を取り出し構えて応戦するが刹那、少女の方がスピードを上回っていた。

「あんたには恨みは無いが、クライアントのため…あの世で後悔するが良い!」

「!」

言葉を言い切るかの刹那に弾かれたリボルバーにぱぁん!と響き渡る銃声、無情にも胸を貫く弾丸。

「がは…っ」

血反吐を吐いてその場に崩れ堕ちる肢体。
からんからんと、手から溢れてしまった拳銃に手を伸ばすも、それに気付いた少女に明後日の方向に蹴り飛ばされてしまった。遠くへ落ちていった愛銃。
これで俺の身を守るものは何もなくなった。
どくん どくんと溢れだし止まることを知らないの朱色の雫。
何にしろ、このスピードは早すぎる。ギリギリのところで致命傷は避けたが、この傷では戦闘は不可能に近い。