「…はい?何か用かしら」

少しばかり不機嫌を雰囲気に醸し出して、眉間に皺を寄せて怪訝そうに男を睨み付ける看護婦。
どうやら、話しかけられた事に関して不満が生じたのだろうか。そんな様子にも臆する事なく小さく感嘆の声をあげて言葉を繋ぐ。

「なんと悲しきかな、最近の天使さまはにこやかに対応してはくれないんだなあ。
俺の師事をしていた白き羽根の天の使いはそれはそれは母なる愛を持ちその笑みは慈悲深きものとされていたのに」

頭に手をやり悲観を表している男に対して、嘲笑うようにふんと一蹴する看護婦。

「おあいにく様、あたしはそう易々と笑顔の安売りはしていないの。
ただのナンパか世間話なら他、当たってもらえる?安月給なのに、バカたちの面倒を看せられてて今忙しいんだから」

看護婦にあるまじき姿、彼女は懐から煙草を取りだし火をつけながらきっぱりと言い放つ。高飛車と捕られる傲慢さを隠そうともせず、逆にそれを全面的に押し出しながら。

「おっと、それはそれは失礼、麗しの天使さま。お見舞いにきたんだよ、ほら、この花束が目印。」

「深紅の薔薇…。そんなのが似合う奴が入院してたかしら…」