ポタポタと落ちる点滴の雫を見つめながらこれまでの行動を振り返ってみる。

「(…そんなわけがない。あたしは何があっても医者には頼らない。
確か、昨晩…依頼通りにあいつを仕留めた代わりに置き土産の弾丸で怪我したんだっけ。
それからなんとか帰って…包帯巻いてたら…


殺したはずのあいつがいた)」

ぼんやり霞がかかった先の瞳に映るのは、仕留めた筈の人物だった。

「…っ!ここにいるんでしょ!今すぐ出てこい!!」

何の反応もなく苛立ちが募るばかり。しかし動けない代わりに声を張り上げて叫び続ける。

「ふざけるな!誰が…誰が助けてくれだなんて言った!あんたに懇願した覚えはない!勝手な事をして…殺すわよ、アサギ!!」

言い切った途端に、無風だった部屋にすぅっと薄く風が吹き、何もなかった隣に人の気配。

『…それだけ叫べればもう大丈夫だね。
それにしても…、開口一番に“殺す”だなんて不謹慎極まりないんじゃないかな』

無表情なままそう語るアサギはゆらゆらと幻影のように宙を浮いていた。まさか、夢の延長線ではあるまいか。