その瞳はぼんやり、何も映しておらず繰り返し呟くのは譫言と荒々しい呼吸だけ。

『(手加減はしたつもりだったけど…思ったより、少女に与えた損傷は強大だったらしい。
というか、華奢な体つきだから多少のダメージでも倍となって還ってしまうのか…)』

こうしているうちにも、少女の状態は悪化している。絶えず流れ落ちる血も、失血死に繋がる。頬の紅潮からにしてもどうやら熱も高くなっている様で脈拍が異常に速い。
そして意識淘汰と混濁により繰り返される譫言。

「…さ、ん…。姉さん…。」

『…ちっ。このままだと…』

俺に迷っている時間などなかった。

『…ユリア、どうなるかはわからないけれど今から行う事は君を助ける為なんだ。強いては俺自身の為なんだけどね。
今、君に死なれる訳にはいかない。だから、許してね』

聞こえていない懺悔を口にする。
俺がやろうとしている事は、確証も何もない試み。
ゆっくりと深呼吸。そして。
痛みに喘ぐ少女の身体に入り込むように接近する。
すぅ。この効果音が合っているだろう。
その瞬間、寒暖を感じる事のない俺は久方ぶりに温度を肌で感じた。

『熱い…っ!』