「あっ。すみません。どーぞ」
「こちらこそ、すみません。」

慌てて場所をあけてくれた男性。
わたしは目当ての漫画を慌てて取ろうとする。


.......ん?無い


そう。
私が読もうとしていた漫画の1巻は彼の手の中にあったのだ。
ここでまた男性と目が合ってしまう。

「あ、もしかして、これお探しでしたか?
どーぞどーぞ!」
「えっあ.......いや。そちらが先に手にとってらしたので。私はまた今度にします。」
「そんな。僕はどれでも良かったのでお譲りします。」
「えっ?」

えっ.......どれでもいいとかどんな状況な
んだよ。

考え込んで固まってしまったわたしを見て
男性は笑みをこぼした

「あの本当にどれでも良くて。友人に借りてくるように言われただけなので」

いやいや、なおさらどれでも良くないでしょ
友人のリクエスト付じゃんか。
と脳内では突っ込むものの
さすがに初対面の人にそんな事は言えない

そんなわたしを見て、また男性は笑った

「フッ。あの僕は罰ゲームなんで、この漫画でなくてもいいんです」

ば、罰ゲーム.......。
なら譲ってもらっても問題ないか!
いや、問題ないのか?!

脳内で自問自答を繰り返していると
男性がまた口を開いた。

「フフッ。問題ありません。どーぞ。」
「あ、ありがとうございます。」