松原君の攻略は難しい。

「バス停着いたし、ここまででいいよ!そっちは大丈夫なの?」


「そっちって?」


あぁ、心の中では松原零って読んでるけど、さすがに本人にそう呼ぶのは違和感あるよなぁ。


「松原。」


「零って呼んで?」


え…!?なんで…??


「奈子。」


「ちょ、タンマ!」


や、やっぱりイケメンに名前で呼ばれんのは破壊力やばい…


「れ、零…!」


顔を手で隠しながら精一杯の声を出す。


「ん、よく出来ました。」


そう、いわゆる頭ポンポンと言うやつをされる。


まって、これ、私手なずけられてるんじゃないの…!?


「じゃ、また明日、奈子。」


「ちょ、ちょっとまったぁぁ!」


びっくりした顔で零が私を見る。


あ、ついでかい声を…


「なんでいきなり、送ってくれたり、名前呼びになったりするの…??」


「そっちの方が距離縮まると思って。」


キョリ、チヂマル…?


「なんで距離縮めなきゃだめなの?」


「そんな気がする。」


こ、こいつ冷静&マイペース王子だな…


「そんなふうにするから、みんな好きになるんでしょ…?」


「ん、なんか言った?」


はっ、やばい変な事口走った…?


「じゃ、じゃあバス来たし。じゃあね。」


「うん。」


そう言って私は急いでバスに乗り、後ろの方の席に乗った。


『奈子。』


そんなアイツの言葉がリピートされる。


な、なんなの!調子狂うじゃん…