「なら、あんたをモデルにしてもいい?」
「俺を?」
「そう。それならやったげる」
葵を指さして、私は葵がしたように笑ってみせた。
葵は一瞬戸惑った表情を見せたけれど、
同じように笑むとこくりと頷いた。
「よし。交渉成立だ。やるからには格好良く描けよ?」
「私を誰だと思ってんの?それくらい朝飯前だよ」
見つめ合って、お互いの意見が合致したことに
どちらともなく拳を合わせた。
面白くなってきた。やってやろうじゃん。
どうせならこいつを利用してやろう。
それがどう転ぶのかは全く分からないけれど、
このつまらない毎日に花を咲かせるには
十分な起爆剤になることだけはこの瞬間分かった。
*別に死ぬことは怖くなかった。
ただ、早く死んで楽になりたかった。
死へと向かうこの平凡な毎日だけは嫌で
早く誰か殺してくれと願った。
誰も私を救えない中で
あいつだけは私に手を差し伸べた。
その手は異様に冷たかったんだ。


